クリアまで遊んでみた感想
※ゲーム内の重要なネタバレも含まれます。
ご了承の上ご覧ください。
良かった点
都市伝説的な雰囲気
学校や日常生活に潜む恐怖という点が、プレイヤーにとっても身近に感じられ、「本当にこんなことがあったのかも…」と想像を掻き立てられます。
実際にシナリオを進めていくと、単なる語り部の話にとどまらず、主人公自身が怪奇現象に巻き込まれることもあり、画面越しに伝わる“ライブ感”のある恐怖を体験できます。
重厚なシナリオ構成
主に6人の語り手が、それぞれ異なる「怖い話」を披露します。
語り手の選び方や選択肢によって話の結末が大きく変化し、どの話も心理的にじわじわと迫ってくるホラーとして、演出や構成の巧みさが光ります。
話を聞く順番やシナリオ中の選択肢、そしてたどり着いた結末によっては隠しシナリオを聞くこともできるかもしれません。
そして、隠しシナリオへたどり着くためのルートの中には、各話が独立していながらも、ルート次第では語り手が一人ずつ消えていくなどの演出が施され、次第に不穏な空気が濃くなっていきます。
最終的に7話全体が一つの大きな物語へと収束していく非常に緻密な構成となっています。

選択肢による分岐の深さ
単に「どんな選択をするか」ではなく、「誰に話をさせるか」「順番はどうか」などによって、話の展開や語り手の内面までも明らかになる点が素晴らしいです。全シナリオをコンプリートする楽しみも大きいです。
同じ話でも、ある選択肢では何事もなく終わるのに、別の選択肢を選ぶと突如として怪異に襲われゲームオーバーになるなど、何が起こるか分からない不気味さと緊張感が常に付きまといます。
この予測不能な恐怖感も、本作の大きな魅力の一つです。
実写を取り入れたビジュアル演出
PlayStation版では、実写映像や写真素材が効果的に使われ、BGMや効果音と相まって恐怖を一層引き立てます。
こうした演出が、よりリアルで不気味な空気を生み出し、物語への没入感を高めています。
また、90年代特有の空気感や「本当にありそうな話」というリアリティも、この演出によって一層際立っています。

気になった点
テンポの遅さ
ホラーというジャンルの特性上ある程度は仕方ないものの、会話のテンポがやや冗長に感じられる場面もあります。
特に、周回プレイ時にはテンポの遅さがストレスになることもあります。
どうしてもテンポが気になる場合は、三角ボタンの長押しで文章を1画面分スキップできるので、場面によって活用すると快適に進められるでしょう。
演出の古さ(現代基準)
映像や音響は当時としてはかなり工夫されており良質ですが、現代の感覚から見るとややチープに感じられる場面もあります。
とはいえ、この“古さ”こそがレトロな味わいとして支持されており、むしろ本作の魅力の一つと捉える人も多いです。

ホラーが苦手な人には厳しい?…でも
ビックリさせるような演出は少なめで、基本的には精神的にじわじわと迫るタイプの怖さが中心です。
選択肢によっては、トラウマ級の展開に至ることもあります。
刺激は強めですが、選択肢によって展開が変わるシステムのおかげで、自分のペースで恐怖に向き合える構成になっています。
ぜひホラー初心者にも、物語に引き込まれる感覚を楽しんでほしい作品です。
感想まとめ
『学校であった怖い話S』は、ノベルホラーゲームとして完成度が高く、今でも根強い人気を誇る名作です。
ただのリメイクにとどまらず、語り手や分岐の追加によって、スーパーファミコン版よりも物語に深みが加わっています。
S版で新たに追加されたシナリオはもちろん、SFC版にもともとあった話にも新しい結末が用意されているので、SFC版を遊んだことがある人でも新たな発見があるはずです。
全体的に派手さは控えめですが、じわじわと怖さが広がっていく構成や、語り手の裏側に隠されたドラマ性など、ただの怪談では終わらない作りが魅力的。
プレイヤーが物語の背景を少しずつ読み解いていく過程もスリリングで、読むことが好きな人にもぴったりの作品です。
今の感覚で見ると映像や音響はちょっと古く感じるかもしれませんが、それが逆に味になっていて、90年代の雰囲気も含めて楽しめると思います。
ホラーに強い人はもちろん、「怖い話は気になるけどビックリ系は苦手…」という人にもおすすめできる、静かに迫ってくるようなホラー体験でした。
語りが進むごとに部屋の人数が減っていく演出は、初見プレイでは純粋に不気味でしたが、複数回プレイすることで「話を聞いている自分=主人公がすでに異常な状況にいる」という構図に気づかされ、背筋が凍るような感覚がありました。
特に7話目や隠しルートでは、ただの語り手と思っていた人物が“別の顔”を見せる展開があり、物語の構造そのものがねじれていくのが面白かったです。プレイヤーが知らずに巻き込まれていた、という感覚が強く、このゲームならではの秀逸な恐怖演出だと思います。
全体を通して思ったのは、語り手が本当に“真実”を話しているのか分からないということ。語る人間によって話のトーンや展開が変わるという構造が、物語の信頼性を曖昧にし、それが逆にリアルで怖いと感じました。
「話をしている人物が一番恐ろしい存在かもしれない」という疑念が、ずっと頭に残ります。
6人の語りが最終的に一つの大きな物語に収束していく構成は圧巻で、単体の話としても楽しめるのに、全体で一つの謎が浮かび上がるような作りに感動すら覚えました。
「怖い」という感情だけでなく、「なるほど」「こう繋がっていたのか」と納得しながら読み進められる構成は、ノベルゲームとしての完成度が非常に高いと思います。

評価と概要について
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
下の記事では「学校であった怖い話S」の☆付き評価とゲームの概要を記事にしています。
良かったら読んでみてください!(※本編のネタバレを含みます)
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